パッケージデザイン

 

消費者の価値観が多様化し、自律的な消費スタイルが定着したいま、売れる商品パッケージとは、どのようなものでしょうか。パッケージデザインとパッケージ印刷の関係から、売れる秘訣を探ります。そこには、SDGs 時代の環境問題も関わっていそうです。

よい商品をつくれば売れるというような時代はとうに終わり、商品の機能や価格だけではなかなか売上へと結びつきづらくなりました。それは、消費者の価値観が多様化してニーズも細分化されたことにより、自分なりの価値基準に照らし合わせて、本当に欲しいものを買う人が増えたからでしょう。
新しい消費行動の広がりには、ソーシャルメディアが関係していると考えられます。つまり、価値観に合う情報にアクセスして、同じ価値観の人たちと情報を共有することで、自分の価値観に基づく自律的な消費スタイルが定着しつつあるのです。
では、あまたの商品のなかから選ばれるためには、どうしたらいいのでしょうか。その手段の一つが、ふさわしい商品パッケージをまとわせることです。見た目や使い勝手のよさは、商品を選ぶ理由にもなり、売上を左右します。商品パッケージの機能やデザイン、パッケージ印刷について知り、売れる秘訣を探りましょう。

商品パッケージの基礎知識

商品パッケージとは、いわば商品の衣装です。主役となる商品を引き立てる役目があります。パーティーにドレス、面接にスーツ、運動にトレーニングウェアを着るように、商品にもそれにふさわしい装いをさせなければなりません。そのためには、商品パッケージというものをよく理解することが大切です。

商品パッケージの三大機能

商品パッケージには、三つの機能があります。
一つ目は、内容物を保護することです。食品でもドリンクでも化粧品でも、製造されてから開封されるまでの間、品質を保持しなければなりません。また、運搬や陳列のとき、振動や衝撃から守る必要があります。劣化や破損を防ぐことは、商品パッケージの最も重要な役割です。

二つ目は、内容物を扱いやすくすることです。商品は出荷され、店頭に並び、購入され、人の手に届きます。一連の流れのなかで、誰もが簡単に商品を扱えなくてはなりません。例えば、オレンジジュースが蓋のない紙コップで販売されたら、運ぶにも並べるのにも不便です。これが缶やペットボトルであれば、格段に扱いやすくなります。

三つ目は、内容物の情報を伝えることです。商品パッケージは見るだけで中身を判別できなければなりません。売り場で開封して、シャンプーなのか洗濯用洗剤なのかを確かめるわけにはいかないですよね。情報というのは、商品名や原材料、内容量、保存方法、消費期限、製造者などです。これは、購入を検討するときに必要となるため、わかりやすく正確に表示することが求められています。
また、文字では表せない情報も重要です。それはいわゆるシズル感で、「おいしい」「香りがいい」「汚れがよく落ちる」といった商品の魅力を視覚に訴えます。パッケージデザインは、売れる商品パッケージの要です。

代表的な素材四種

商品パッケージは、実にさまざまな素材からつくられます。主流は、紙・金属・プラスチック・ガラスです。
一つ目の紙は、商品パッケージに古くから利用されてきました。板チョコの外装や弁当の包み紙のように、紙そのもので包むものもあれば、厚手の板紙を組み立てて箱として使うこともあります。
紙箱にはいろいろな種類があり、日用品から贈答品まで、多種多様な商品の外箱に使われることが多いです。箱の内側をプラスチックでコーティングすると、牛乳パックのように液体容器としても使えます。

二つ目の金属は、アルコール飲料や炭酸飲料のアルミ缶、コーヒーのスチール缶が代表的です。食品やペットフードの缶詰、茶筒、整髪料の容器などにも多用されています。また、リサイクル率の高い素材です。

三つ目はプラスチックで、真っ先に思いつくのはペットボトルでしょうか。種類は、炭酸飲料のための耐圧ボトル、耐熱圧ボトル、緑茶やジュースのための耐熱ボトル、ミルク入り飲料などの非耐熱ボトルに分類できます。最大の特長は、その軽さです。輸送コストが削減できるうえ、持ち運びやすく、扱いやすいことから、広く普及しました。
軟包装にもプラスチックを使用したものがあります。バリア性が高く、液体や気体を通さないため、さまざまな商品に使われてきました。近年は、ヘアケア用品や洗剤の詰め替えパッケージとして定着しています。

四つ目のガラスは、ペットボトルに押されぎみとはいえ、歴史ある素材です。かつてドリンク類はガラス瓶で売られていました。
いまも瓶入りのアルコール飲料や瓶詰の調味料は健在です。ガラスには、重い、割れるという欠点があります。しかし、高いデザイン性と、リユースやリサイクルできることは捨てがたく、その魅力が注目され、高級感のある商品パッケージとして活躍しています。

めくるめくパッケージデザインの世界

三大機能を満たし、ふさわしい素材を使えば、売れる商品パッケージになるのでしょうか。売上を左右している要素は、何なのでしょうか。ここでは、売り場で商品を輝かせているパッケージデザインについて見ていきます。

伝説の商品パッケージはなぜ伝説になったのか

コカ・コーラは世界中で愛されています。コーポレートカラーの赤をあしらったロゴマークはもちろん、特徴的な形状のボトルが印象的です。「コンツアーボトル」と呼ばれ、1915 年に誕生しました。開発のきっかけは、模造品対策だったといいます。
当時、人気商品となったコカ・コーラの偽物が出回っていました。そこで、暗闇で触れても、地面に砕け散っていても、コカ・コーラだとすぐわかるボトルの開発に着手したそうです。美しい曲線を描くガラス製ボトルは、カカオ豆のイラストから着想を得たのだとか。
1923 年にアメリカの特許庁に意匠登録、1960 年には商標登録されています。商品パッケージが商標と認められたのは異例中の異例でした。ほとんどのアメリカ国民が、ボトルの形状でコカ・コーラを識別できることが決め手となったそうです。珍しいボトルがヒット商品を生むわけではありません。しかし、視認性は重要なポイントとなります。ロングセラー商品には、一目でそれとわかる特徴があるものです。

コカ・コーラを描いた画家がいました。それは、スペインの生んだ奇才サルバドール・ダリです。1943 年の作品《アメリカの詩》のなかに、アメリカの象徴として登場させました。コカ・コーラの認知度の高さがうかがい知れるというものです。
さらに同時代のアメリカには、ポップアートの旗手アンディ・ウォーホルがいました。1960 年代の前半、《コカ・コーラ》《ラージ・コカ・コーラ》《100 本のコーラ・ボトル》など、ボトルそのものを作品にしています。自分の好物を描いたとされる《100 個のキャンベルスープ缶》も有名でしょう。
キャンベルの濃縮缶スープは、1898 年に発売されました。このときから、赤と白のラベルを使用していたといいます。なぜ、赤と白だったのでしょうか。実は、同社の重役がコーネル大学のフットボールを観戦して、赤と白のユニフォームに魅了されたからなのだとか。後に、ラベルの中央に金色のエンブレムが加わりました。これは、1900 年に開催されたパリ万国博覧会で、濃縮スープが受賞したゴールドメダルを模しているそうです。
現在、英語ラベルのスープ缶のラベルには、当時とほとんど変わらないものがあります。赤と白のラベルといえば、キャンベルのスープ缶を思い出す人は、昔もいまも少なくないでしょう。印象的な色使いで、ブランドを確立した好例といえます。

人の目を引く色と文字

パッケージデザインには、「メリコの法則」なるものがあります。これは、大手広告代理店のコピーライターだった伊吹卓氏が提唱しました。「メ=目立って」「リ=理解しやすく」「コ=好感が持てる」と、その商品は必ずヒットするというのです。
パッケージデザインの要素である色と文字を考えてみましょう。色には、そこから連想されるイメージがあります。例えば、赤色なら「元気」「情熱」「辛味」というように。青色は「さわやかさ」「クール」「清涼感」、金色は「高級感」「特別感」「豊かさ」など、色それぞれには、誰もがなんとなく共通に抱くイメージがあるはずです。
それを上手に使いこなせば、商品の特徴を直感的に理解してもらうことができます。激辛を売りにしたスナック菓子の袋が真っ赤だとしたら、「辛そう」と感じることでしょう。ただ、ありきたりで目立てない可能性はあります。でも、青や金では、目立ったとしても「激辛」は伝わりづらそうです。もしかすると、「強さ」「絶望」がイメージされる黒色なら、「激辛」らしさを出せるかもしれません。商品の特徴と色のイメージをマッチさせて、理解しやすい商品パッケージを目指しましょう。

文字にも、連想されるイメージがあります。同じ言葉でも「石鹸」と「石けん」では印象が異なり、同じモノでも「お茶」と「ティー」では異なる印象を抱きます。
書体もまた雄弁です。明朝体は「真面目」「高級感」「優雅」「女性的」、ゴシック体は「カジュアル」「力強さ」「親しみやすさ」「男性的」、丸ゴシック体は「ポップ」「かわいらしさ」というように、書体から受けるイメージは無視できません。ふさわしい書体は、洗濯用洗剤と贈答品の高級茶葉では異なり、同じヘアケア用品でも男性用と女性用では異なるのです。

商品パッケージにおける文字には、もう一つ、重要な役目があります。それは、商品関連の情報をわかりやすく伝えることです。
商品パッケージの裏面には、食品類の一括表示欄のほか、成分表、商品の取り扱いに関する表示、商品パッケージの素材に関する表示、商品コード(JAN コード)、企業や問い合わせに関する表示などがびっしりと記載されています。これらの情報をしっかりと整理して、見やすくレイアウトする必要があるでしょう。

法の下の商品パッケージ

商品パッケージに商品情報を表示するとき、「食品表示法」を忘れてはなりません。これは、原材料や添加物の表示方法や文字の大きさ、またアレルギー表示などの私たちの健康に関わる表示内容について定めているものです。そのほかにも、商品パッケージに関連する法律があります。「PL 法」や「容器包装リサイクル法」、化粧品や医薬品に関する「薬機法(旧薬事法)」、優良誤認を防ぐ「景品表示法」などです。

このように、商品パッケージは法律と無縁ではいられません。法律による縛りがある一方で、法律に守られてもいます。商品が注目されて人気が高まれば、コカ・コーラのように偽物が出てくるかもしれません。そのときは、知的財産権に基づく「著作権法」「商標法」「意匠法」などの法律を基に、商品パッケージを守ることができるのです。裏を返せば、他社の商品パッケージも同じ法律によって守られているということになります。知らずに権利を侵害してしまうことのないように、法律をよく理解しておくべきでしょう。

ユニバーサルデザインを考える

商品パッケージをデザインするとき、考慮したいことがあります。それは、誰にとっても使いやすいデザインになっているのかどうかです。ユニバーサルデザインの概念は、製品や建築、情報などあらゆることに関係します。商品パッケージも例外ではありません。
例えば、シャンプーのボトルには側面に凹凸の「きざみ」があります。これは、シャンプーとリンスの容器を区別するためにつけられたものです。髪を洗うときは目を閉じるため、色や文字では区別がつきません。そこで、触ってわかる識別方法が考えだされたのです。目の不自由な人や視力の弱い人にとっても使いやすいボトルとなりました。まさにユニバーサルデザインの好事例であり、いまやISO 規格となっています。
下記の「ユニバーサルデザインの7 原則」がガイドラインとして役立つでしょう。子どもでも高齢者でも使いやすいか、右利きでも左利きでも開けやすいか、文字の色は読みづらくないかと、商品を手にした消費者が使っているシーンを想像しながら、パッケージデザインを考えたいものです。

  1. 誰にでも公平に利用できること
  2. 使ううえで自由度が高いこと
  3. 使い方が簡単ですぐわかること
  4. 必要な情報がすぐに理解できること
  5. うっかりミスや危険につながらないデザインであること
  6. 無理な姿勢をとることなく、少ない力でも楽に使用できること
  7. アクセスしやすいスペースと大きさを確保すること

今や、ブランド力を決める!パッケージデザイン

商品価値を高めるパッケージ印刷の技術

完璧なパッケージデザインでも、それだけでは絵に描いた餅です。ファッションデザイナーが描くデザイン画は、パタンナーや縫製工場の技術によって美しい衣装となるように、パッケージデザインは、パッケージ印刷の技術によって、商品を輝かせる商品パッケージになるのです。

四つの印刷方式とデジタル印刷

基本の印刷方式は、「平版印刷」「凸版印刷」「凹版印刷」「孔版印刷」の四つです。いずれの方式も、印刷には「版」を必要とします。
まず、凹凸のない版を使うのが「平版印刷」。これは、水と油性インキの反発を利用して印刷します。そのなかで代表的なものが「オフセット印刷」です。色の再現性が高く、仕上がりの美しさに定評があります。紙箱やラベルのほか、ビール缶や化粧品のボトルにも用いられてきました。
凹凸のある樹脂製の版を使うのが、「凸版印刷」。原理は印鑑と同じで、凸部分にインキをつけて転写します。この印刷方式で有名なものは、かつて新聞の印刷に用いられた「活版印刷」でしょう。商品パッケージと関わりが深いのは、「フレキソ印刷」です。
版に弾性があり、厚紙やダンボールにもきれいに印刷できます。
「凹版印刷」は、凹部分にインキを入れて印刷します。この印刷方式のなかでは、「グラビア印刷」が有名です。高精度に色彩の濃淡を表現できるため、写真集や美術書などに使われてきました。商品パッケージでは、大ロットで製造する軟包装の印刷に向いています。
「孔版印刷」は、網状の版の小さな穴からインキを押しだして印刷します。代表的なのは「スクリーン印刷」です。曲面の印刷ができるため、プラスチック製のボトルによく使われます。

近年、急増しているのは「デジタル印刷」です。これは版を必要とせず、パソコンのデータをそのまま利用します。原理はプリンターと同じです。しかし、紙以外の素材にも対応しているうえに、プリンターよりも大量の印刷ができ、オフセット印刷と同レベルの仕上がりとなります。
最大のメリットは、「小ロット、多品種生産」です。従来の印刷方式は、版代がかかるため、デザイン数を絞ったうえでロットを増やして、コストを抑えていました。デジタル印刷の初期費用は、版代よりもリーズナブルなデータ変換費のみです。そのため、小ロット生産のデメリットが解消され、商品パッケージは、本当に必要な数だけをつくれる時代になりました。これは在庫リスクの回避にもつながります。
また、多品種生産は、商品パッケージを活用したブランディングを可能にしました。例えば、一点物の商品パッケージをつくる「パーソナライズ」、同じ商品に数十パターンのデザインを用意する「バージョニング」という技術を使えば、話題性を生みだせます。

目が離せない!価値の高まるデジタル印刷

商品に興味や好感を持ってもらうことは、ブランディングへの第一歩です。そこからリピーターやファンが生まれ、愛着や信頼が育てば、商品は押すに押されぬブランドとなることでしょう。

映える商品パッケージ

商品パッケージは、その見た目で人を惹きつけなければなりません。SNS が普及したいま、さらに見た目は重要になりました。
多くの人がSNS 映えに関心があるからです。
例えば、「バージョニング」で一つの商品にデザインの異なる商品パッケージをまとわせます。地域や時期に限定したデザインを展開すると、プレミアム感が出るでしょう。また、キャンペーン期間中だけ、色彩やイラストの少しずつ違う缶ジュースやお菓子が陳列されていると、それは壮観です。見ていると全種類ほしくなり、全部そろえたら人に見せたくなることでしょう。それは、話題を呼ぶ商品となるはずです。
「モザイクシステム」というおもしろいアプリケーションがあります。ベースとなるデザインを拡大したり回転させたりして、いろいろなデザインパターンを自動生成するというものです。例えば、100 本のボトルを製造したら、100 種類のデザインのボトルが完成します。既製品なのに、「一つとして同じものがない」をつくれるのです。同じ商品を前にして、どれを選ぶのかに迷うというユニークな体験は、なかなかできません。
これらは、版を必要としないデジタル印刷だからできることです。このような手法を使うことで、SNS の話題づくりに一役買うのではないでしょうか。

直接印刷とラベル印刷

印刷面に着目して、パッケージ印刷を見てみましょう。
まず、商品パッケージそのものに印刷するタイプ。紙箱やダンボールのほか、ビールをはじめとするアルコール飲料の缶は、じかに印刷することが多いです。缶の種類によって、金属の板に印刷してから加工するものと、缶に成型してから曲面に印刷するものがあります。缶の表面に凹凸をつける「パネルフォーミング」という加工技術で装飾を施すことも増えてきました。上手に取り入れると、手触りで識別できる個性的な缶になるでしょう。

多くの商品パッケージには、ラベル印刷が使われています。パッケージデザインをラベルとして印刷してから、商品パッケージに接着させるものです。
暮らしのなかで最も目にするのは「タックラベル」でしょう。これは、いわゆるシールです。トイレタリー、洗剤、化粧品から文房具、書籍、医薬品まで、あらゆる商品に使われています。おなじみなのは、ヘアケア用品のアイキャッチシール。売り場で、「さらさら」「しっとり」など商品の特長を訴求します。何種類ものデザイン展開で、プロモーションに活用してもいいでしょう。
タックラベルと似ている「グルーラベル」は、貼る直前に接着剤をつけます。日本酒やビール、調味料、栄養ドリンクなどに使われてきました。

「シュリンクラベル」は、ペットボトルでおなじみです。印刷したフィルムに熱を加えて、ボトルの形に合わせて定着させるもの。
ぴったりとフィットして全体を包み込むため、遮光性があり、内容物をしっかりと守ります。グラビア印刷での大量生産が多いものでしたが、最近はデジタル印刷が増えてきました。

使い方次第で多種多様な企画が可能となるシュリンクラベル

もう一つ、ペットボトルに用いられるラベルがあります。それが、伸縮性のある「ストレッチラベル」です。ボトル全体を覆うのではなく、胴体の一部に巻きつけます。シュリンクラベルと似ていますが、熱を加えずに接着するため、デザインの美しさが保てます。
昨今は、プラスチックの使用量を削減するため、商品パッケージの「薄肉化」が進んでいます。ラベルも例外ではなく、厚みの薄い巻きラベルが増えてきました。

直接印刷に見えるのが、「インモールドラベル」です。容器をつくるとき、ラベルごと成型します。一体化しているので、ラベルの剥がれる心配がありません。特長は、耐水性があり、油や薬品にも強いことです。ヘアケア用品や洗剤、化粧品、医薬品、食品など幅広い分野で重宝されてきました。
キラキラと輝く偏光箔の「ジェムフォイル インモールドラベル」、桃の皮のような手触りの「触感インモールドラベル」など、話題性のある個性的なインモールドラベルも誕生しています。また、ペットボトルのようにPET(ポリエチレンテレフタラート)から製造される容器のための「PET 容器用インモールドラベル」の開発も進んでいるようです。

インモールドラベルについて

パッケージ印刷が環境のためにできること

近年は、環境への取り組みが活発化しています。2015 年に国連で採択され、2030 年を達成期限とした「持続可能な開発目標(SDGs)」の影響も大きいでしょう。ビジネスの世界でも、さまざまな企業が環境負荷の削減に着手しています。環境に配慮した活動を進める企業に投資するESG(環境・社会・ガバナンス)投資も広がってきました。いまや企業と環境は切っても切り離せなくなっています。
その動きは、商品パッケージにも関係します。美しくデザインされ、売上に貢献したとしても、役目を終えれば廃棄されるのが、商品パッケージの宿命です。ゴミ問題や温室効果ガスと無縁ではいられません。

さまざまな環境問題を解決するためのキーワードが、3R(スリーアール)。これは、Reduce(リデュース)・ Reuse(リユース)・Recycle(リサイクル)の頭文字で、最近はRenewable(リニューアブル)を加えて、4R ともいわれています。これに配慮した商品パッケージが「環境配慮型パッケージ」です。ゴミの発生を減らし、繰り返し使えて、資源として再利用できるように設計されています。
世の中では、フードロスが問題視され、廃棄される食品を削減する取り組みが広がっています。商品パッケージの課題は「包材ロス」です。従来の印刷方式による大量生産では、在庫のロスが生じます。また、プラスチック循環利用協会によると、廃プラスチックは900 万トンを超え、そのうちの約60 万トンが製造過程で発生するといいます。それなら、過剰につくりすぎないことは、一つの解決策となるでしょう。「デジタル印刷で、必要なときに、必要な数だけつくる」が産業界の常識になれば、包材ロスを削減できるはずです。

素材のうちに無駄を省くことはできないでしょうか。商品パッケージに使われる素材は、異なる素材の複数の層からできています。
この構造を変えることで、ゴミの発生を減らす「包材レス」の模索も始まりました。
また、代替素材への転換も考える必要があるでしょう。いま、プラスチック製のアイキャッチシールを廃止して、パルプを原料としたセルロースフィルムや再生ペットフィルムへと替える動きがあります。これらの取り組みは、廃プラスチックや海洋プラスチックゴミを削減することにつながります。さらに、クリーニング店で使われている、水にも熱にも強い耐洗紙をラベルに利用するという挑戦もあります。これも3R・4R の活動であり、SDGs 達成への貢献が期待できるものでしょう。

自分の価値観に基づいて、本当に欲しいものだけを買うという消費スタイルが定着したいま、商品パッケージに求められることは少なくありません。商品の保護・利便性・デザイン性といった三大機能やユニバーサルデザインを考え抜き、商品やブランドの個性を打ち出し、売上に結びつけることが期待されています。さらには、全世界の課題である環境問題への配慮が必要不可欠です。現代の商品パッケージは、「売れる」と「地球に優しい、環境に優しい、人に優しい」を同時に満たしてこそ、世界に愛されるものになるのかもしれません。商品パッケージに課せられたミッションをクリアにするために、パッケージ印刷をよく理解して、デジタル印刷を上手に活用しましょう。

参考

  • 『パッケージデザインを学ぶ 基礎知識から実践まで』(株式会社 武蔵野美術大学出版局、書籍)
  • 『パッケージデザインの教科書 第3 版』(株式会社 日経BP、書籍)