パウチ包装

最近では環境への関心の高まりもあり、必要な時に必要な量だけ複数の製品を印刷できるデジタル印刷技術への注目が高まっています。

弊社ではこの社会的な環境ニーズに合わせて、2013年からデジタル印刷を用いたスパウトパウチの開発に取り組み、市場に投入することができました。ここではその一端についてご紹介したいと思います。

スパウトパウチの試作プロセス


弊社より各方面のお客さまへデジタル印刷について紹介したところ、最初に多品種少ロットのスパウトパウチについてご相談を頂いたのは味噌をベースにした食品用途でした。

そこで試作品を作成するにあたり、グラビア印刷で採用されていたフィルム構成そのままで印刷のみデジタルに置き換えて試作を行い、合わせて当社の主なお客様である化粧品やトイレタリーをターゲットにしたデザインも同時に印刷し、スパウト付けを行いました。

スパウトの足部分の形状がそのままパウチの外観に現れると共に、浸透液チェックを行っても漏れが確認されました。これはデジタル印刷のスパウトパウチを進めるにあたり、インキの特性に合わせた工夫が必要、という認識を持った最初の事例となりました。

スパウト口

スパウト口

パーマ剤向けデジタル印刷スパウトパウチの取り組み


パーマ剤向けスパウトパウチのご相談を頂いたのはそれからしばらくしてのことでした。それまではグラビア印刷でのスパウトパウチを採用していましたが、商品がサロン様向けの少ロット且つ種類も多く、在庫問題を抱えていました。また中身がパーマ剤ということで、包材の耐内容物性と合わせてインキの耐内容物性とバリア性とスパウト適性と耐圧強度やコストを同時に解決する必要がありました。そのためまずは考えられるフィルム構成で試作品を作成することにしました。

スパウト口

スパウトの足の部分の外観は改善され、耐圧強度・ヒートシール強度・落下試験・浸透液チェックとも当社の出荷基準を満たすことができました。また特に落下試験に関しては過剰な評価もしておく必要も考え、建物の2階から10回落下させたが破袋は発生しませんでした。これらのことからもう一歩話を進め、耐内容部性の検討を始めました。

耐内容物試験の実施


デジタルのインキはグラビアインキと比較して耐性面が弱い傾向にあります。そのため通常中身の保存性のためにバリアフィルムが用いられるのですが、中身の保存性と合わせてインキの耐性をバリアフィルムでカバーするフィルム構成を検討しました。また中身がパーマ剤でアルカリ性でもあることから、中身に耐性のあるフィルムと接着剤との組合せの検討を行いました。それらの中でシーラントにバリア性のあるフィルム等も検討し試作しましたが、結果的には接着剤の選定が一番のポイントでした。この時検討し評価した仕様が、その後の水平展開にも役立つこととなりました。

 

生産方法の検討


通常グラビア印刷ではまず印刷を行い、そこから印刷されたロール毎にラミネートと製袋を行います。またそこではフィルムの最低購入量や印刷の予備等が必要になり、仮に実用で500mしか必要がなくても2000mや4000mのフィルムの購入と印刷~ラミネート~製袋の進行が必要になります。デジタル印刷の場合、例えば実用で555m必要であった場合でも555mのみ印刷し、そこから次の絵柄を連続印刷することができます。

仮に絵柄が5種類(ABCDE)あったとして、製袋寸法が同じであれば(A+予備)+B+C+D+(E+予備)という数量で生産が可能になります。これらは昨今環境問題で注目されているプラスチック使用量削減にも効果的です。

 

この生産方法は当デジタル印刷を用いたスパウトパウチでも採用しています。印刷以降のフィルムを先貼りしておき、印刷絵柄が複数になっても連続でラミネート~製袋が可能となり、多品種少ロットであっても環境にやさしい生産方法であるといえます。

スパウトパウチ

これらのことを踏まえて完成したのが写真にあるスパウトパウチです。寸法が同じのため、上述の生産方法が可能になり、プラスチック使用量を削減すると共にコストも削減することが出来ました。

水平展開について


この取り組みを基にノウハウを蓄積し、スパウトパウチの先貼りを透明構成とアルミ構成を準備して水平展開を行い、化粧品・トイレタリーを中心に実績を積んで行った。また昨今はコロナの影響もあり、消毒剤関係の引き合いも増えてきています。

それらの中で変わり種としてはエンジンオイルの添加剤を始め、当社としてはこれまであまり実績の無かった食品用途にも主にネットを通じて引き合いを頂ける様になってきました。また、環境面をアピールすべく、表面に紙を用いた構成やバイオマスフィルムを用いた構成・蒸着を用いた構成など裾野を広げてきた。今後もこれらの取り組みを進めて参ります。

 

まとめ

デジタル印刷で製造するスパウトパウチの取り組みから採用に至った経緯についてご紹介しました。また、2021年には多くの会社の協力を得ながら、パッケジングコンテストでテクニカル包装賞を頂くことができました。
Pro-perでは、小ロットからオリジナルのスパウトパウチ作成や、環境に配慮したスパウトパウチ作成など、お客様のニーズに合わせてデザイン、印刷、加工まで専門スタッフが丁寧に対応いたします。
スパウトパウチをお求めの方は、是非Pro-perのスパウトパウチをご検討ください。スパウトパウチに関するご質問やご相談がございましたら、お気軽にPro-perまでお問い合わせください。

記事を作成・監修したマイスター

吉田 潤一

福島印刷工業株式会社
マーケティング部 開発室長
資格:包装専士

1986年よりパッケージ印刷業界に従事しております。長年培ってきたパッケージ印刷に関する知識を活かし、当社の加工技術や製品情報をご紹介します。
趣味 は フォークソング、オヤジバンドでライブ活動をすること。